2024年の歌ってみたタグ界隈に関する雑感

歌ってみた年次レビュー歌ってみた動画データ分析ニコニコ動画関連各種考察
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2024年もあと6時間で暮れようとしております。
おかげさまで、2024年3月には週刊歌らんは800回を迎え、途中サイバー攻撃でニコニコが休止するという状況があったものの11月には16周年を迎えることが出来ました。そんなこんなで16年以上歌ってみた界隈を第三者的な立ち位置で主に再生数などといった数字を中心にみてきた流れで2024年をざっくりと振り返りますと2024年は

  • 年間投稿本数はまだ減少傾向
  • 今年も公式企画は順調
  • ニコニコに原曲のない動画の伸び悩み
  • 今年の歌ってみた界隈を席巻したネタ系動画

といった年でした。

年間投稿本数はまだ減少傾向

まず、歌ってみたの年間投稿数ですが、42,670本(2023年12月25日午前5時~2023年12月25日午前4時59分59秒に投稿され、2024年12月25日午前5時時点で視聴可能だった動画)となり、2023年の同時期に投稿された動画本数と比較して13,747本減少しました。なんといっても約2ヶ月に及ぶニコニコの休止が大きく、昨年よりもさらに減少して、史上最少の投稿本数となりました。休止がなかったらどうだったかというとあまり楽観的な状況ではありません。昨年一年間の週次投稿本数(歌コレ開催週を除く)が平均約1,044本・中央値約1,019本に対して、今年の週次投稿本数(歌コレ開催週および休止週・再開週を除く)は平均約854本・中央値約837本という状況でしたので週次の投稿本数は昨年を大きく下回っている状況です。仮に休止期間の8週間と休止週・再開週の計10週間の投稿数が平均値となる854本だったと考えても42,534本ですので、昨年を下回る計算です。どんなに楽観的に見積もったとして昨年とほぼ変わらないというのが現況といえます。さらにニコニコ休止の影響は如実に表れていて、休止前の週次平均本数が約868本だったのに対して、再開後は約815本です。しかも再開直後3週間ほど続いた再開お祝い投稿期間を除くと約753本と100本以上の下落となりました。投稿本数の下落傾向がこのまま続くのか、予断を許さない状況となっています。

今年も公式企画は順調

そうした状況の中、公式企画である「歌ってみた Collection」(以下、歌コレと略)開催週の投稿総数は、春が4,250本(昨年は3,358本)、秋が3,369本(昨年は3,233本)とかなりの存在感を示しています。また、
はろー!にゅ〜みゅーじっく!」内で展開されている歌ってみた課題曲ランキングは、課題曲によって、参加数に大きな差が出るようになっている状況です。昨年と同じ働きかけになりますが、歌い手側はこのランキングに参加することによってニコニコのコア層へアピールすることが出来るメリットを捨てている状況で、未だ知られていない人に注目を集めるような仕組みが整っているニコニコの最もよい企画がはろー!にゅ〜みゅーじっく!の課題曲ランキングですのでもったいないといえます。「知ってください」という歌い手さんの切実な投稿を様々なSNSで見かけますが、人気のある人がさらに人気が出るサイクルがメインのYouTubeやTiktokではなく、ニコニコのこうした媒体を上手く使っていくことも重要ではないかと考えます。

ニコニコに原曲のない動画の伸び悩み

そして今年も歌ってみたリスナーの需要を充たす供給を歌い手側が出来ていない現状が続いています。私は各楽曲の歌ってみた動画数を集計して毎年年末のランキング特番でご紹介していますが、今年もよく歌われた楽曲≠視聴者が歌ってみたで聞きたい楽曲となっています。例えば、1位になった鬼ノ宴は100位以内に3本しか入っていません。2位のモエチャッカファイアに至っては1本です。過去はどうだったかというと例えば2011年の歌われた楽曲1位だった千本桜は9本のランクインとなっています。翌年は歌われた本数が1位であったものの3本にとどまっていますが、これは楽曲発表から1年経たという状況が主因で、今年のように当該年に発表された楽曲が1位になって、本数が少ないという事態は当時はあまりありませんでした。
この辺は捉え方にもよるのですが、ニコニコには原曲が上がっていない楽曲に関しては、よほど話題が広く一般的でないとあまり見られないという状況であると私は考えています。ニコニコで原曲を見て、ニコニコで派生動画を見て、さらにまた原曲に戻るというループが発生しやすいシステムが「ボカコレアプリ」を中心に構築されているニコニコでは、原曲がニコニコに存在している楽曲の歌ってみたの方が有利となります。もちろん、私自身は様々なチャネルを利用してアピールすることを歌い手の皆様へおすすめしていますので、外部依存の楽曲をアップロードすること自体は否定しませんが、YouTubeと同時投稿であるなどといった理由がない限りはニコニコに原曲がある楽曲を選んでいくのがベストといえます。

今年の歌ってみた界隈を席巻したネタ系動画

外部楽曲のガチ系歌ってみたが伸び悩む一方で、年々再生数などが伸び、今年はついに年間ランキングを席巻したのがネタ系動画です。私が「週刊ニコニコインフォ 第26号」に出演させていただいた2021年からすでに「ネタ系の歌ってみたが足りない」と言い続けてきておりますが、いよいよネタ系動画を求める需要はランキングを大きく動かす事態となっています。なお、「ネタ」という単語がどうも替え歌とかを示しているという誤解があるようなのですが、ここでいうネタ系というのは替え歌などのみを示しているものではなく、例えば今年の年間一位に輝いた「レッツゴー!陰陽師 古伝説コラボ」のような大人数コラボものももちろん入ります。さらには歌うことですでにそれがネタともいう状況になる「ニコニコメドレーシリーズ」もネタ系動画といえますが、こちらにも再度注目が集まってきていて、今年の年間新着25位に「組曲『ニコニコ動画』 / covered by あたたかくなる」がランクインするという状況にまでなりました。加えて、ニコニコ18周年のお祝いで投稿された「ニコニコ18周年メドレーフィーバー」に属するニコニコメドレーシリーズもかなり注目されており、動画そのものが近年のニコニコメドレーシリーズとして比較して、かなりの勢いで再生が回っているだけでなく、それらの歌ってみたもかなり注目されています。特に「舞い上がるニコニコ動画」についてはすでに5本の歌ってみたが投稿されており、そのいずれも2024年12月31日0時時点で100再生を超えている活況です。それ以外でももちろん替え歌の需要は旺盛で、KYSさんの替え歌動画はTOP100に5本、負無オトナさんの替え歌動画は同じくTOP100に3本、それぞれランクインしています。

いわゆるボカロ曲はどうか

こうした状況の中で、では、いわゆるボカロ曲はどうなのか、という点についても改めて触れておきます。昨年の振り返りでは、「ボカロ曲をアマチュアでも良いから合成歌声ではない人の歌声で聴きたいという需要は相当数減ってきているのが実情」と述べさせていただきました。再生数などを冷静に確認する限りにおいてはこの状況には変化はないものの同様に昨年も触れさせていただいたようにボカコレことThe VOCALOID Collection上位楽曲をいち早く歌って世の中に出すという点は今年も有効だと言える状況が確認できています。今年はボカコレが年内に1回しかなかったため、確証を出せる状況ではないもののボカコレで話題となった楽曲に関しては再生数やマイリスト・いいね数の伸びが一歩抜けていると考えられます。また、ネット界隈を席巻したボカロ曲に対する歌ってみた動画の需要も根強く、「強風オールバック」や「好きな惣菜発表ドラゴン」は、歌ってみたが求められているボカロ曲の代表的事例といえます。

録って出しも悪くない

こうしたことを書いていますと「クオリティが高い歌ってみたでないと見てもらえない。だからちゃんとした録音をして、MIXを依頼して、動画も依頼して、さらに歌い手に求められているオリジナル楽曲の作詞作曲を自分でしたり、著名ボカロPへ有償依頼したり、ってするとお金も時間も足りないから本数が出せない。」という話が聞こえてくるのですが、ではクオリティが高いと自負されているその動画は、どの程度の再生数でしょうか。さらには歌い手が全員作詞作曲をして、オリジナルMVを作って、一本ごとに様々なコストを支払わないと見てもらえないという事実もありません。こうした「クオリティ恐怖症」ともいうべき状況は数年前に歌ってみたのトップランナーだった方々が残してしまった最大の負債ともいうべき問題ですが、歌ってみたはそこまで肩肘張ってクオリティを重視しなければならないようなものではないのです。実際、今年もほとんど録って出しに近いようなものでも面白かったり、楽しかったり、インパクトがあったり、みんなが求めているものだったりした動画は週刊歌らんの新着ランキング15本に入ってきています。もちろん、歌コレのような多くの注目が集まるような大規模イベントや周年記念動画などはそれなりのコストを掛けてもよい(掛けるべきではなく、あくまで掛けてもよい、ですのでご留意ください)と思いますが、日常投稿に関しては、むしろ視聴者が求める歌ってみたとは何かをリサーチして、見る人たちが見たくなるような、視聴者の需要を満たすものを自分で施したMIXレベルでかまわないので、とにかくどんどんアップロードしていくことの方が大事だと考察します。時には質より量の方が大事なこともあるのです。

視聴行動の変革は定着へ

ニコニコのリスナーが大きく行動変容している、という点を一昨年来書き続けていますが、データを見ている限りでは、いよいよ定着の段階になったといえます。週刊歌らんのボカコレアプリでの視聴は安定して多数という状況を維持しており、完全にボカコレアプリによる視聴へと移行したといえるでしょう。ボカコレアプリはサムネイルのみ表示の音声再生アプリですので、MVに力を入れてもリスナーにはあまり届かない可能性があります。こうした点の前述した「録って出しも悪くない」という考察につながっています。来年も引き続き、ボカコレアプリの需要は続くと考えられますので、視聴行動の変革に沿った対応が重要です。また、サイバーテロの影響は視聴行動にも表れています。18年前のニコニコが最大の特色としていたものがいわゆるZ世代と称させる若い世代から求められはじめています。ニコニコ超会議の来場年齢層は上の年代こそ増えているもののその主軸となる世代は高校生から大学生くらいの世代です。こうした若い視聴者層にとっては、コメント弾幕やMAD、ニコニコメドレーなどといった、いままでなら「古くさい」といわれてしまったものを求める動きを見せています。若い世代にとって、ショート動画などでは味わうことが出来ず、いまだ経験したことのない「面白いもの」だからです。こうした意識の違いや変化も動画投稿者側は、再生数にこだわるのであれば、改めて意識して取り入れていく必要があるのではないでしょうか。

オリジナル曲を投稿されている方へ

また、毎年の繰り返しになりますが、今年投稿のボカロ曲がすでに5本以上ミリオン再生をし、今年も「好きな惣菜発表ドラゴン」が一世を風靡したことでもわかるようにニコニコはインキュベーターとしての役割を取り戻したと行ってもよいと考えます。オリジナル曲を投稿されている方、特にボカロ曲を作られている方は、投稿先をYouTubeオンリーにしてしまうのはあまりにももったいないと思います。YouTubeに広告があふれ、若年層がボカコレアプリへ流出をはじめているいまこそ、YouTubeとニコニコの両方で楽曲の展開をはじめる良いタイミングになってきていると分析しています。是非とも2025年からのスタートをご検討ください。

歌い手を応援されている方へ

今年も引き続きのお願いですが、応援している歌い手さんの動画には、ぜひボカコレアプリ上でかまいませんので、いいねを押して、マイリスト登録を行いってください。さらにできればニコニコ動画アプリも入れていただいて、「かんたんコメントニコニコ大百科へのリンク」で良いのでコメントをしていってください。ここがYouTubeなどと異なるところで、ニコニコでは動画に対して行える支援のアクションはこのようにたくさんあります。ぜひ、ニコニコならではの支援を行って、応援している方が投稿した動画やニコ生を盛り上げていってください。

最後に

最後に毎年書いていることですが、引き続き一部で歌ってみたに関する誤った情報が流れている状況がちらほら見受けられます。一応16年以上毎週歌ってみたを数字で見続け、歌い手の皆様の動きなども追いかけ続けている中で、さすがにこれは変ではないかと思った件については各種SNSにて言及させていただいております。
ちなみに投稿される動画や日々の日常配信の多くを雑談やゲーム実況が占めていて、ほとんど歌ってみたの活動をしていないのに「歌い手集団」「歌い手ユニット」と呼称される2.5次元的な方々は、呼称をそろそろ「2.5次元アイドルユニット」とかに変更していただいた方が良いのではないか、と愚考する次第です。
今後も歌ってみたに関する誤った情報が流された場合には引き続き、本ブログを含む各種SNSなどで言及させていただきます。

また、様々なデータの提供も私から行うことも可能ですので、もし、歌ってみたの様々な情報を流すWebラジオプログラムやニコニコ公式チャンネルなどをご検討の企業団体、歌ってみたについて記事にまとめたいというメディアなどがございましたら16年以上第三者的な立ち位置で主に数字を中心に歌ってみたを俯瞰してきたものとして、最大限の協力をさせて頂きたいと思います。

2024年の歌ってみた界隈を思うままに書いてみました。見ている位置によって見える風景は違うとは思いますが、15年以上数字を中心に歌ってみた界隈を見続けてきた私にはこんな感じに見えている、ということでご理解いただけますと幸いです。さて、2024年の歌ってみたは果たしてどんな景色となりますでしょうか。それでは、皆様引き続きよろしくお願いします!

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