ニコニコ学会に関するつれづれ

ニコニコ動画関連各種考察
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今度ニコニコ学会という企画が立ち上がるようです。今回はこれについてつれづれに書いてまいります。

ニコニコ学会とはによるとコンセプトは以下のとおりの見出しになっています。

ユーザー参加型研究の世界を作り上げよう!

ニコニコ学会βはあなたの学会です

ニコニコ学会βは動画での発表を推奨します

ニコニコ学会βはユーザー参加型の価値を追求します

ニコニコ学会βはオンラインの学会です

ニコニコ学会βは研究の価値を多様化します

ニコニコ学会βはβ版です

ニコニコ学会βには終わりがあります

それぞれにある程度の説明が書いてあるわけですが、それを踏まえたうえで私が理解したのは

“ニコニコ学会はオンライン上での活動を主軸に多くの野生の研究者を巻き込んで研究の世界にもユーザー参加型ムーブメントを作り上げよう”

ということです。ここにまとめられている内容には不備(後述の余談参照)もありますが、基本的に大賛成ですし、こうしたすばらしい研究をされている方々はたくさんいらっしゃいますのでもっと注目されていくべきです。

となれば、私が最初に想像するのは”研究を動画にまとめてニコニコ動画へアップロード、[ニコニコ学会研究発表]のタグでもつけてみんなで見ながらコメントで指摘しあう”というスタイルです。

ところがこのニコニコ学会で最初に行われる企画は、ニコファーレで平日に行われ、しかもメインの発表が全て事前に決まっているという”シンポジウム”です。これのどこが”オンライン上での活動を主軸に多くの野生の研究者を巻き込んだ研究の世界にもユーザー参加型ムーブメント”なのでしょうか?

まず、”動画での発表を推奨”する”オンラインの学会”が最初のイベント(とあえて書きます)をニコファーレで開催するのはなぜでしょうか。オンラインでの研究成果が集まってきたところにこうしたシンポジウムを開催するのであれば”オンラインの学会”かつ”同時に、物理的な会場でしか提供できない価値も大事にしていきたい”という理念がかなえられますが、最初にオフラインのイベントを開催して”オンラインの学会”なのでしょうか?順番が逆ではないでしょうか。

次に平日開催のどこが”ユーザー参加型”なのでしょうか。多くの同人即売会が土休日開催になっているのは土休日休みの人々が圧倒的に多いからです。ユーザ参加型ということであれば初手は土休日開催が普通なのではないでしょうか。

そして”ユーザー参加型の価値を追求”するはずなのに一般から募集する発表者が一番最後にまとめて行われ、*1さらには募集から締め切りまでの時間があまりにも短い、というのはどういうことなのでしょうか。”ユーザー参加型の価値を追求”するのであれば、メインスピーチは今回の呼びかけにかかわっていない、しかも専門研究者ではない在野の研究者にすべきだったのではないでしょうか。

今回のニコニコ学会、呼びかけをされている委員のどなたかにニコファーレで何かやりたいという希望があって、そこからニコニコ学会を”思いついた”のではないかと私は考えております。だからコンセプトに書かれていることと最初のイベントがここまで見事に乖離してしまったのではないでしょうか。

そして講演者として名前が出ているニコニコ動画運営サイドも何がなんだかよく判っておらず、”とりあえずいつもお世話になっている方々だし、理念は共感できるのでご協力しますが、こんな感じでいいんでしょうか”という”巻き込まれている”感がします。

最初のイベントはもう決まってしまっているので今から取りやめも出来ないでしょうが、もしあのコンセプトで今後も本当に継続していく意志があるのでしたら、イベントが終わったあとは、今回のイベントはなかったことにして一からコンセプトのとおり、オンラインのユーザ参加を主軸に一段ずつ進めていっていただきたいと強く願います。

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余談

ここからは余談です。

いまの日本人でしたら”邪馬台国がどこにあったのか”という論争を知らない方はあまりいらっしゃらないと思います。実は、この論争が一般的になったのは1967年のことで、それ以前は専門学者以外には知られていない日本人一般にはなじみのない論争でした。この年、一冊の本が上梓されベストセラーになります。宮崎康平氏の『まぼろしの邪馬台国』です。九州各地から韓国に至る地域を踏破して研究した上で書かれたこの書籍は、日本人全体へ邪馬台国論争を一般化するとともに硬直化していた専門学者の論争にも火をつけることになりました。

これを書いた宮崎康平氏は実は島原鉄道という鉄道会社の重役だった方でどこかの大学に所属する専門研究家ではなかったのです。まさに在野の郷土史研究家でした。郷土史研究の分野にはこうした在野の研究者が多数おられ、地域の郷土資料館などを通じて研究成果を発表されているケースも多数存在しています。

また、最近では”ダァシエリイェス”で一部には有名な京浜急行ですが、京浜急行をこよなく愛し、その歴史などを研究、鉄道ファン誌や鉄道ピクトリアル誌に原稿を寄稿、さらには京浜急行に関する書籍も執筆し続けてきた一人の鉄道研究家が今年の1月に急逝されました。その方のお名前を吉村光夫といいます。吉村氏はTBSの社員アナウンサーとしてテレビの中で大活躍されていました。30代後半から40代の方には”夕やけロンちゃん”や”まんがはじめて物語のロングおじさん”というとわかる方もおいでかもしれません。吉村氏はテレビでの活躍と同時に京浜急行に関する研究を進められていた在野の鉄道研究家だったのです。鉄道ジャンル、特に個別鉄道会社に関する研究ではこうした在野の研究者が昔から数多く存在しており、主に鉄道ピクトリアルという専門研究誌を通じて数多くの研究成果が今も発表され続けています。

話題を少し戻しますと江渡浩一郎氏のニコニコ学会に関するあいさつ文にこんな内容があります。

ニコニコ研究会は、従来から研究を推進してきたアカデミアとビジネスに加え、ユーザーの参加による研究の世界を構築しようというものです。

「ユーザー参加型コンテンツ」にならって言えば、「ユーザー参加型研究」の世界を作り上げたいと考えています。

ユーザーがコンテンツを作るのと同じように、ユーザーも研究をして、その成果を発表できます。

そしてそのために、ユーザー・ビジネス・アカデミアが共同で研究を進める場を作りたいと考えました。

それがニコニコ研究会です。

おそらく宮崎氏や吉村氏のようなユーザサイドにいる在野の研究者が大活躍されているジャンルが存在することはご存知でありつつも表現がわかりにくくなってしまっただけだと思いますので、あまり読まれない拙稿ではありますが、「ユーザー参加型研究」の世界はすでに存在しているジャンルが多々ありますよ、ということを余談として補足させていただきたいと思います。

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2011/11/30追記

私の意見とは真逆ですが、こういう見方もあるということで

ニコニコ学会βの運営を褒めてみた – Togetter

をご紹介しておきます。これはこれで正しい見方と思います。私とのやりとりもこのあと追記されると思いますのでそこまで含めてみて頂くとより面白いと思います。

いずれにしてもこのような議論が出てくるだけでも一石を投じている価値はあると思いますので、今後の展開予定を当日発表していただければ嬉しいです。

*1:しかも3人次々と発表する、とここに入れておりましたが、私の読み間違いだったようです、訂正の上お詫びいたします

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